バイカー19ブルース (90年代・青春バイク旅) Episode 5

running on farm

前回までのストーリー

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道央

宗谷岬を出発した後、

道東にも行きたかったのだが、

いかんせん 金が無い。

のんびりと旅をしていたら、

帰りのガソリン代すら無くなってしまう。

仕方がないので、

宗谷岬から道北の海側を東に走行中

北海道の中央部分にある

美瑛町へ向かう事にした。

牧場

北海道の土地は広大である。

東北エリアは山や谷が連なっているが、

北海道は平地が多く、牧場がたくさんある。

美瑛町に向かう途中、

脇道にある牧場で休憩する事にした。

牛が放し飼いになっており、

管理人おろか柵すらない牧場で

見渡す限り、草原と牛と僕だけだった。

牛さん達は

僕がいてもいなくても、のんびりしていて

牧場は居心地がよかった。

お腹が空いてきたので、

渋谷の露店で購入したキノコを、

水筒に入れておいたスープに混ぜて

食べる事にした。

magic

そしたら

気分が少しオカしくなったので、

少し横になった。

ふと我に返ると

ここには本当に牛と僕しかいないんだ

と再認識した。

せっかくだから・・・

キャピTARO

全裸で走り回るか!

と思ったが、

それはやめておいた。

思考回路の警備員

しばらく寝転がっていて

僕を包み込んでくれている芝生が

母なる大地である事に気が付くと

なんだか・・安心した。

僕もいつかは 土に還るのだろうか・・・

そんな事を考えていた。

美瑛の丘

美瑛町に到着してから、

まずラベンダー畑を見に行った。

まだなんとか咲いている時期でよかった。

その後、

美瑛町付近を走っていたら、

またとつぜん迷子になった。

さっきまでは

公道を走っていたはずなのに

いつの間にか

山道となり、坂道になっている。

この丘を越えて行くしかなさそうだ。

そのまま急な坂道を走っていくと、

道の終わりが見え始め

丘の頂上地点を通り越した瞬間、

僕は言葉を失った。

キャピTARO

!!!!

そこからの景色は

上手く説明出来ないが、

山は何層にもわたって連なり

空半分は雨雲で覆われて雨が降り

もう半分は太陽の光で虹がかり

大地の麦畑が明暗の境を映していた。

僕はバイクで丘をくだりながら、

この景色の全てに圧倒されていた。

すると とつぜん 涙が

キャピTARO

あれ?

止まらない。 どしたんだろ。

胸の奥からドンドン何かがこみ上げてくる。

どうしようもなくなった僕は

ついに

爆発した

なんだか良く分からないけど、

突如として現れた

この説明がつかないぶっ飛んだ景色に

病んだ心が癒されて、

淀んだ心が洗い流されて、

涙となって出たんだと思う・・・

キャピTARO

はぁー はぁー

一旦全部リセットされると

そもそも

心を傷つけて病ませていたのは、

自分自身でもある事に気付かされた。

儚い景色

あの丘から見た景色は、

もう2度と見る事はないだろう。

たまたま通り抜けた丘は

何処にあるかも分からないし、

あの 雲、太陽、雨、虹 は

あの時にしか見れない。

その自然の美しさは

僕の記憶の中で

今でも鮮明に蘇り、

決して薄れていく事はない。

つづく・・・

sunset